2019年7月7日日曜日

「銀塩」って何…?(その2)


前回の続きです。

金属の銀と、「ハロゲン族」の元素の化合物『銀塩』を透明なフィルムに塗ってゼラチンで固めたものが写真用フィルムです。ハロゲン族と化合した銀だから、「ハロゲン化銀」とも言います。
これに光が当たると性質が変わるのですが、じつは光に当たっただけでは見た目にはわかりません。
ここで「現像」という作業が出てきます。

すごく大雑把にいうと、カメラの中で一瞬、光を浴びたフィルムには、さまざまな光の強さによって変化の「中心」ができます。
現像のプロセスは、この中心(潜像核という)を育てて大きくして、感光した「ハロゲン化銀」を、当たった光の強さに応じて「銀」に戻していく作業です。戻す、を理科の言葉で言うと、還元反応、ってやつの一種ですね。

必要なだけ反応が進んだら、銀に戻らなかったハロゲン化銀は、つまり光が当たらなかった=画像にならなかった部分、なわけなので、「定着」という作業で取り除いてしまいます。
こうして、透明なフィルムの上に、強く光が当たったところはより黒く、当たらなかったところは透明に近く、濃淡を持った画像ができあがります。
実際の景色の見た目とは濃い薄いが逆になっているので、ネガティブ、反対の、という意味の「ネガ」フィルムです。

今度は暗室でこのフィルムに電球の光を当てて、紙の上に「ハロゲン化銀」を塗ってゼラチンで固めたもの、つまり「印画紙」に投影してやります。カメラで撮影したときとまったく同じように、光がたくさん当たったところがより強く、当たらなかったところはより弱く、印画紙上のハロゲン化銀が反応していきます。
そしてフィルムと同じように、「現像」「定着」します。白い紙の上に、銀が黒く、濃淡で表現されたモノクロプリントができあがり。
かっこよく「ゼラチンシルバープリント」なんて言い方もありますよ。

さきほどの説明で、現像したフィルム上で黒い部分は、もともと撮影した景色では光が多かった部分。透明な部分は、光が少なかった部分でした。
もう一回、印画紙に光を当てるときには、フィルム上で黒い部分は印画紙には光が届かず、紙の白さに近く明るくなり、フィルム上で透明に近い部分は、たくさん光を通すので印画紙はたくさん感光して黒く暗くなる。
もともとの景色で中間の明るさは、フィルムでも中間、印画紙でも中間になります。
(これがいわゆる18%グレー、平均反射率というものだったりします)

というわけで、ネガからプリントをつくると、撮影したかった対象と同じ濃淡が再現できるのです。もちろん、撮影に失敗してなければ! ですけどね。


余談ですが、フィルムの場合はモノクロフィルムといえども、写す対象はとうぜんフルカラーの世界なので、赤だろうと青だろうと、ちゃんと感光して写るようにできています。
いっぽうで印画紙に引き伸ばす時点では、もうフィルム上にはモノクロの濃淡しかないので、色の違いを意識する必要はなく、多くの印画紙は赤い光には反応しないように作ってあります。暗室内で赤い電球のなかで、紙を拡げたり現像液に浸けたりできるのはこの性質のおかげ。
なので、フィルムは完全な真っ暗で取り扱う必要がありますが、印画紙は制限付きで灯りが使える。印画紙を手探りだけで扱うのはものすごく大変ですから、なかなかよくできた仕組みだと思います。

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